
社員には「ちゃんと休んで」と言えるのに、自分は休めない。休みの日に何もしないでいると、そわそわして落ち着かない。
経営者と話していると、この「休むことへの罪悪感」の話に、本当によく出会います。ワークライフバランスという言葉は世の中に定着しましたが、経営者にとっては、どこか他人事の言葉のままではないでしょうか。
今日は、経営者のワークライフバランスについて、罪悪感の正体と、休み方の考え方を書きます。
パブロ「もっと働け」の話でも、「仕事を減らせ」の話でもありません。配分の話です。
罪悪感のもとにあるのは、「自分の時間=会社の時間」という前提
経営者が休めないのは、意志が弱いからではありません。前提が違うからです。
社員の時間には、制度が引いてくれる境界があります。経営者の時間は、自分で線を引かない限り、終わりがありません。売上も、資金繰りも、社員の雇用も、最後は自分に返ってくる。だから「休んでいる時間も、本当は会社のために使えたはずだ」という計算が、頭のどこかで回り続けます。これが、罪悪感の大きな部分を作っています。
この前提のまま休もうとしても、うまくいきません。休むことが「会社からの持ち出し」に感じられるからです。
休息は持ち出しではなく、経営資源の手入れ
前提を、こう置き換えてみてください。社長の心身は、会社の中で代わりの利かない経営資源です。
機械に定期的な手入れの時間が要るように、人にも休息が要ります。休みなく使い続けた頭は、疲れていることに自分では気づけないまま、判断の質を落としていきがちです。このあたりは、以前判断ミスが増えた経営者は、戦略ではなく体を疑えという記事に書きました。
つまり経営者の休息は、さぼりではなく設備メンテナンスです。そう捉え直せると、罪悪感はずいぶん軽くなります。
会社を犠牲にせず休む、3つの工夫
- 休みを「予定」として先に入れる
- 休みの日の連絡ルールと、任せる範囲を決めておく
- 休み方をひとつ決めておく


1つ目は、休みを「予定」として先に入れることです。
空いたら休む、では休みの順番はなかなか回ってきません。仕事の予定より先に、休む日をカレンダーに入れる。商談と同じ扱いにして、簡単に動かさないことです。
2つ目は、休みの日の連絡ルールを決めておくことです。
休んでいても連絡が入れば、頭は仕事に戻ります。「この用件なら電話、それ以外は翌営業日」と線を引いて、社員と共有しておく。あわせて、不在のあいだの判断を誰にどこまで任せるかも決めておくと、安心して離れられます。境界は、意志ではなく仕組みで作るものです。
3つ目は、休み方をひとつ決めておくことです。
いざ休みになると、何をしていいか分からない。これも経営者あるあるです。散歩でも、釣りでも、家族との食事でも、仕事を忘れられる過ごし方をひとつ持っておく。中身は何でもよくて、「休む=これをする」と決まっていることが大事です。



僕も、休む日は予定として先に確保するようにしています。埋まってから探す空き時間は、いつまで経っても来ないので。
社長の休み方は、そのまま会社の文化になる
もうひとつ、大事な視点があります。社員は、制度だけでなく社長の背中も見て休み方を決めます。
社長が休まない会社では、有給制度がどれだけ立派でも、社員は休みにくい。逆に、社長が堂々と休んで、機嫌よく戻ってくる会社では、社員も安心して休めます。あなたの休息は、あなた個人のものであると同時に、会社の働き方の見本です。
社長の健康が会社の続き方を左右するという話は、事業承継と社長の健康という記事にも書きました。ワークライフバランスは、その日々の実践編だと思ってもらえたらいいです。
会社と人生は、どちらかを取る二択ではありません。会社を長く続けたいなら、経営者自身が長く健やかでいられる働き方も、経営の設計のうちです。
まずは来月のカレンダーに、休む日をひとつ、先に入れてみてください。
この記事のまとめ
- 経営者が休めないのは意志の問題ではなく、「自分の時間=会社の時間」という前提のせい
- 社長の心身は会社の中で代わりの利かない経営資源。休息はさぼりではなく手入れ
- 休みは先に予定として入れる、連絡のルールと任せる範囲を決める、休み方をひとつ決めておく
- 社員は制度だけでなく社長の背中も見て休み方を決める。社長の休息は会社の文化になる
- 経営者が健やかでいられる働き方は、会社を長く続けるための設計のうち











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